納める保険料はいくら?

医療保険
納める保険料はいくら?

一体どれくらいの保険料を医療保険に支払っているのか気になりますね。

正確な額を出すには細かい計算が必要ですが、細かい計算が面倒な人のために、まずはざっくり大体の額を出す方法を説明してから、細かい計算の方法を説明します。

~ざっくりの計算~

健康保険の場合

給与の約10%ですが、会社と折半になるのでその半分の給与の約5%になります。

注意点として、ここでの給与は手取りではありません。

通勤手当や残業手当などの各種手当も含みます。

国民健康保険の場合

前年度の総所得の約10%です。

総所得とは、全ての収入から必要経費と、給与所得の場合は給与所得控除を引いた額です。

例えばAさんの昨年の事業所得は500万円で、それにかかった経費が200万円でした。

かつAさんは給与所得ももらっており、200万円給与所得があったとします。

給与所得控除は78万円になりますので、

事業収入分:(500万-200万)+給与所得分:(200万-78万)=422万

となり、422万円が総所得となります。

給与所得控除とは、雇われている人の経費のようなもので、収入によって変わります。

収入金額 給与所得控除額
162.5万円以下 55万円
180万円以下 収入金額×0.4 – 10万円
360万円以下 収入金額×0.3 + 8万円
660万円以下 収入金額×0.2 + 44万円
850万円以下 収入金額×0.1 + 110万円
1000万円以下 195万円(上限)
1000万円超

(2020年時点)

~しっかり計算~

実はしっかり計算するにも、住んでいる場所などの条件によって保険料率などが微妙に異なるために完全に網羅することは難しいです。

また、健康保険も国民健康保険も一つだけではありません。

というのも公的医療保険を運営する保険者が複数あるのです。

被保険者は保険料を納付している私たちですね。

insured-person

健康保険の場合

健康保険
保険者 協会けんぽ(全国健康保険協会)
被保険者 会社員やその家族
中小企業など
特徴 厚生労働省管轄の公法人
企業に健康保険組合がいない場合、保険の引受者になる
保険料率 都道府県ごとで異なる
健康保険
保険者 組合健保(健康保険協会)
被保険者 会社員やその家族
大企業など
特徴 企業が単独or複数共同で設立
近年大企業でも健康保険組合を組織しないところが増えている
保険料率 被保険者の負担が1/2を超えない範囲で組合が決めることができる

<組合健保>

常時700人以上の従業員が働いている大企業が自前で設立するか、複数の企業が共同で設立するのであれば常時合計3000人以上が必要です。

健康保険組合の保険料率は3~13%の範囲で組合ごとに設定してよいことになっています。

また被保険者の負担は1/2を超えてはならず、実際には多くの健康保険組合では7~9%程度に設定されているため、実際の被保険者の負担は半分以下の3.5~4.5%程度になることが多いため、協会けんぽよりも少ない支払いで済むことが多いです。

さらには健康保険組合には付加給付という制度もあります。

これは多くの場合、医療費の自己負担は25000円程度が上限になるという制度です。

高額療養費制度などを使った後でも、25000円を超えた額は健康保険組合から支給されます。

まさに大企業の恩恵です。

しかし現在7割以上の健康保険組合が赤字と言われていて、健康保険組合を解散して協会けんぽに移る会社が増えてきています。

これは、健康保険組合が集めた保険料を後期高齢者医療制度などに拠出する仕組みができてしまったため集めた保険料では賄いきれなくなってきたためです。

それでは健康保険組合(組合健保)の保険料を見てみましょう。

毎月納める保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率7~9% × (1/2)

報酬月額135万5千円以上で上限139万円

賞与から納める保険料 = 標準賞与額 × 保険料率7~9% × (1/2)

年間の賞与合計が573万円で上限

ここでの標準報酬月額とは、4,5,6月の報酬月額の平均を標準報酬月額表に当てはめて算出します。

この標準報酬月額を9月から翌年の8月まで用います。

(報酬月額とは基本給に残業手当や通勤手当などの各種手当を合算した会社が1か月に社員に払う金額の合計です。)

この標準報酬月額は135万5千円が上限で、そこからは定額になります。

そして、保険料は賞与(ボーナス)にもかかってきます。

標準賞与額とは賞与の1000円未満の端数を切り捨てた額です。

賞与については年間の合計が573万円で上限になり、そこからは定額になります。

等級 標準報酬月額 報酬月額
以上 未満
1 58,000 ~ 63,000
2 68,000 63,000 ~ 73,000
3 78,000 73,000 ~ 83,000
4 88,000 83,000 ~ 93,000
5 98,000 93,000 ~ 101,000
6 104,000 101,000 ~ 107,000
7 110,000 107,000 ~ 114,000
8 118,000 114,000 ~ 122,000
9 126,000 122,000 ~ 130,000
10 134,000 130,000 ~ 138,000
11 142,000 138,000 ~ 146,000
12 150,000 146,000 ~ 155,000
13 160,000 155,000 ~ 165,000
14 170,000 165,000 ~ 175,000
15 180,000 175,000 ~ 185,000
16 190,000 185,000 ~ 195,000
17 200,000 195,000 ~ 210,000
18 220,000 210,000 ~ 230,000
19 240,000 230,000 ~ 250,000
20 260,000 250,000 ~ 270,000
21 280,000 270,000 ~ 290,000
22 300,000 290,000 ~ 310,000
23 320,000 310,000 ~ 330,000
24 340,000 330,000 ~ 350,000
25 360,000 350,000 ~ 370,000
等級 標準報酬月額 報酬月額
以上 未満
26 380,000 370,000 ~ 395,000
27 410,000 395,000 ~ 425,000
28 440,000 425,000 ~ 455,000
29 470,000 455,000 ~ 485,000
30 500,000 485,000 ~ 515,000
31 530,000 515,000 ~ 545,000
32 560,000 545,000 ~ 575,000
33 590,000 575,000 ~ 605,000
34 620,000 605,000 ~ 635,000
35 650,000 635,000 ~ 665,000
36 680,000 665,000 ~ 695,000
37 710,000 695,000 ~ 730,000
38 750,000 730,000 ~ 770,000
39 790,000 770,000 ~ 810,000
40 830,000 810,000 ~ 855,000
41 880,000 855,000 ~ 905,000
42 930,000 905,000 ~ 955,000
43 980,000 955,000 ~ 1,005,000
44 1,030,000 1,005,000 ~ 1,055,000
45 1,090,000 1,055,000 ~ 1,115,000
46 1,150,000 1,115,000 ~ 1,175,000
47 1,210,000 1,175,000 ~ 1,235,000
48 1,270,000 1,235,000 ~ 1,295,000
49 1,330,000 1,295,000 ~ 1,355,000
50 1,390,000 1,355,000 ~ 

<協会けんぽ>

協会けんぽ(全国健康保険協会)は健康保険の中で、健康保険組合に加入していない会社が加入します。

健康保険組合が基本的に独自に集めた保険料のみで運営するのに対し、協会けんぽには保険料以外にも税金が投入されています。

協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに異なりますので、正確には住んでいる都道府県の保険料率を調べる必要がありますが、おおむね10%前後になっています。

被保険者の負担はその半分の約5%ということですね。

ここでは2020年の東京の9.9%で計算します。

毎月納める保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率9.9% × (1/2)

報酬月額135万5千円以上で上限139万円

賞与から納める保険料 = 標準賞与額 × 保険料率9.9% × (1/2)

年間の賞与合計が573万円で上限

標準報酬月額、標準賞与額、そしてそれぞれの上限値に関しては健康保険組合と同様です。

結局組合健保でも協会けんぽでも計算式は同じで、保険料率が異なるというだけですね。

その保険料率は組合ごとや都道府県ごとに異なりますので、正確に算出したい場合は自分の住んでいる都道府県の保険料率を調べてみてください。

そして、この保険料率は年々上昇している傾向にあり、今後も上がっていくと思われます

国民健康保険の場合

国民健康保険
保険者 都道府県と市区町村共同
被保険者 個人事業主やその家族
特徴 住んでいる場所で加入資格を得る
保険料率 市区町村によって異なる
前年度の収入に比例して高くなる(上限あり)
国民健康保険
保険者 国民健康保険組合
被保険者 個人事業主やその家族
特徴 同じ事業や業務に従事している
300人以上で構成
業種が限られ加入には一定の資格が必要
保険料率 収入に関係なく固定の場合が多い

<国民健康保険組合>

同じ業種や業務の従事者で構成されて組織される組合です。

医師、歯科医師、薬剤師、弁護士、税理士、理・美容師、建設、食品業界など様々な業種にあります。

しかし、加入には資格などの条件があり、市区町村の国民健康保険加入者の1/10以下の加入者数しかいません。

メリットとしては保険料が収入に比例して高くなる市区町村の国民健康保険と違い、保険料が固定の場合が多いです。

例えば文芸美術国民健康保険組合(通称:文美国保)の場合

月額19600円で、家族一人あたり10300円で固定になっています。

国民健康保険組合は2~3万円程度で固定のところが多いようで、ある程度以上の収入のある人にとって、国民健康保険組合はメリットがあると思います。

<都道府県と市区町村共同>

こちらが一般的な国民健康保険です。

健康保険が標準報酬月額を基準とするのに対して、国民健康保険は前年度の収入により保険料が決まります。

計算はかなり複雑です。

保険料には医療分と支援分があります。

医療分は医療保険を使うためのものであり、支援分は後期高齢者医療制度への支援という形となります。

計算式としては

1年間に納める保険料 = (前年の総所得-基礎控除) × 所得割 + (均等割+平等割) × 世帯人数

となります。

イミフメイデスネ!!!!!

一つずつ説明します。

まず総所得です。

総所得 = 全ての収入 - 必要経費 - 給与所得控除(給与所得ある場合)

です。

給与所得控除は以下の表のとおりです。

収入金額 給与所得控除額
162.5万円以下 55万円
180万円以下 収入金額×0.4 – 10万円
360万円以下 収入金額×0.3 + 8万円
660万円以下 収入金額×0.2 + 44万円
850万円以下 収入金額×0.1 + 110万円
1000万円以下 195万円(上限)
1000万円超

(2020年時点)

次に基礎控除です。

合計所得金額 基礎控除額
2400万円以下 48万円(43万円)
2450万円以下 32万円(29万円)
2500万円以下 16万円(15万円)
2500万円超 なし

(2020年時点)

()の左の大きい方の額は所得税などの計算に用いられます。

()内の額は住民税の計算や、この国民健康保険料の計算に用います。


そして所得割、均等割、平等割です。

細かいことは理解しなくてもいいと思います。

所得割 均等割 平等割 上限
医療分 7.22% 24,048円 20,765円 61万円
支援分 2.34% 8,244円 6,163円 19万円

これは平成29年度~31年度の全国の市区町村の平均値です。

市区町村ごとにこの所得割・均等割・平等割は変わります。

これらの数字は「国民健康保険料 住んでいる市区町村名」で検索したらわかると思います。

平等割は0にしている市区町村もあります。

これらの数字を先程の式に当てはめていきます。

家族がいる場合は、均等割と平等割に人数をかけます。

例えば事業所得が400万円で必要経費が100万円で、かつ給与所得も200万円ある人で、家族は妻と子供がいて計3人家族だったとします。(2020年改定以降の数字で計算します)

給与所得控除は表の360万円以下のところになるので

200万×0.3+8万円=68万円、

となります。

総所得=400万円-100万円+200万円-68万円=432万円

となります。

基礎控除は43万円です。

よって保険料は以下の計算になります。

医療分

(4,320,000-430,000)×0.0722+(24,048+20,765)×3人=415,297

支援分

(4,320,000-430,000)×0.0234+(8,244+6,133)×3人=134,157

合計

415,297+134,517=549,454

となります。

1年間に納める保険料

医療分 (前年の総所得-基礎控除) × 医療分所得割
+ (医療分均等割+医療分平等割) × 世帯人数

上限61万円(2019年現時点)

支援分 (前年の総所得-基礎控除) × 支援分所得割
+ (支援分均等割+支援分平等割) × 世帯人数

上限19万円(2019年現時点)

上限や所得割や平均割や均等割は増加傾向にあります。

少子高齢化によって、社会保険も国民健康保険も被保険者の負担は年々重くなっています

後期高齢者医療保険の場合

後期高齢者医療保険も国民健康保険と同様の計算方法になります。

ただし、平等割は後期高齢者医療保険にはありません。

所得割や均等割は都道府県によって異なります。

2019年の全国平均は以下の通りです。

所得割 均等割 平等割
8.81% 45,116円 64万円

1年間に納める保険料

(前年の総所得-基礎控除) × 所得割 + 均等割

上限64万円(2019年現時点)

1人当たり1か月の平均負担額は2019年で5,857円となっています。

年間でいうと70,283円になります。約7万円ですね。

それに対して、75歳以上の一人当たりの年間の医療費は約95万円です。

つまり、75歳以上の人は平均して年間7万円保険料を納めて、95万円医療費を使っていることになります。

この差をどう埋めるのか、どう補うのかが現在の問題です。