労災保険では、業務災害や通勤災害によって被災してしまった労働者に対しての保険給付を行うだけでなく、社会復帰促進等事業というものもあります。
社会復帰促進等事業には「社会復帰促進事業」「被災労働者等援護事業」「安全衛生確保事業」の3つがあります。
社会復帰促進事業
被災労働者の社会復帰を促進するために、保険給付と併せて支給されます。
以下のような事業があります。
労災病院・リハビリ施設の設置・運営
外科後処置
保険給付は傷病が治った後は支給されませんが、酷い傷が残った場合にそれを消すためや義肢などを装着するために手術が必要なこともあります。
そのような場合は、「外科後処置」として手術費・治療費が支給されます。
温泉保養
傷病が治った後(症状の固定後)、原則第8級以上の障害(補償)給付を受けている場合に認められるものです。
義肢などの支給
義手や義足などの補装具が支給されます。
アフターケア
脊髄損傷などの場合、症状固定後も後遺症がひどくなったり、後遺症に付随する疾病を発症する可能性があるため、予防や保険上の措置が受けられます。
その他
社会復帰資金などの借り入れをすることができます。
被災労働者等援護事業
被災労働者の療養生活の援護、介護の援護、遺族の就学の援護や、資金貸付の援護などの被災労働者やその遺族を援護するためのものです。
この事業のメインになるのは「特別支給金」です。
これらは保険給付と併せて支給されます。
特別支給金は一般の特別支給金とボーナス特別支給金があります。
<一般の特別支給金>
一般の特別支給金には以下のものがあります。
休業特別支給金は給付基礎日額に基づいて計算されますが、それ以外は一定額を一時金として支給されます。
<ボーナス特別支給金>
ボーナス特別支給金には以下のものがあります。
これらは算定基礎日額から計算されます。
このようにこれまで保険給付と併せて支給されるものとして見てきたものは、実は社会復帰促進等事業の中の被災労働者等援護事業の一部です。
分けて考えるとわかりにくいので、保険給付に組み込みました。
イメージとしては、保険給付が土台になる部分で、特別支給金などは上乗せされる部分のようなものになります。
<その他の被災労働者等援護事業>
他には以下の援護事業があります。
労災就学援護費
遺族(補償)年金、1~3級の障害(補償)年金、重篤である傷病(補償)年金の受給権者であって、本人または子の学費の工面が困難である場合に支給されます。
労災就学保育援護費
遺族(補償)年金、1~3級の障害(補償)年金、重篤である傷病(補償)年金の受給権者であって、本人または生計を同一とする家族が就学をするが、小さい子どもがいてその子どもを保育所や幼稚園に預けるための費用を援助する必要がある場合に支給されます。
休業補償特別援護金
休業補償給付が支給されるまでの3日間は事業主から休業補償が支給されますが、これを請求できない場合に支給されます。
その他
・労災年金を担保とした資金の貸し付け
・被災労働者が受ける介護の援護など
安全衛生確保事業
労働災害の防止に関する活動に対する援助、健康診断に関する施設の設置及び運営、その他労働者の安全・衛生の確保のためのものです。
以下の事業があります。
- ・労働災害防止対策
- ・災害防止団体に対する補助
- ・健康診断施設の設置・運営 ・救急薬品の配布など